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最高裁判所第三小法廷 昭和37年(あ)2341号 判決 1963年2月26日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人伊藤静男の上告趣意について。

売春防止法一四条は、業務主たる人の代理人、使用人その他の従業者が同法九条等に違反した行為に対し、業務主に右行為者らの選任、監督その他違反行為を防止するために必要な注意を尽さなかった過失の存在を推定した規定と解すべく、したがって業務主において右に関する注意を尽したことの証明がなされない限り、業務主もまた刑責を免れ得ないとする法意と解するを相当とする(昭和二六年(れ)第一四五二号同三二年一一月二七日大法廷判決、刑集一一巻一二号三一一三頁、昭和二八年(あ)第四三五六号同三三年二月七日第二小法廷判決、刑集一二巻二号一一七頁参照)。それ故、売春防止法一四条によって他人の犯罪行為につきなんらの罪責のない人が業務主であるという一事をもって刑罰を科せられるとの前提に立脚して、同条を違憲であるとするとの所論は、その前提を欠くものであって理由がない。

記録を調査するに、業務主たる被告人において、第一審判決判示第二の安田貞子の違反行為につき、これを防止するために必要な注意を尽したことの主張立証の認められない本件において、被告人に対し売春防止法一四条の適用を肯定した原判決は正当であるといわなければならない。

また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 横田正俊 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 石坂修一)

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